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トランペットで音階を演奏できるしくみ

「おまけ」その1 〜4番ピストンバルブについて〜
 (4ピストン式を含む、トランペットとピッコロ・トランペットの演奏可能な音域表)

「おまけ」その2 〜トランペットの出せる一番高い音は?〜
 (トランペットの極限的音域表)

トランペットで音階を演奏できるしくみ



トランペット真鍮(しんちゅう:銅と亜鉛との合金)で出来たパイプ3つのピストンバルブが付いています。押す場所は3つしかないのにどうしてドレミファソラシドと音階を演奏することが出来るのでしょうか?

迫ってみたいと思います。
 



 
金管楽器で音をだす際は、マウスピースといわれる吹き口に唇をあて、唇をブーと振動させるとその管の持つ固有振動音に共鳴して大きな音が鳴せる、という仕組みとなっています。

共鳴を誘うわけですから、ただ闇雲にブーとやればよいわけではなく、その管の長さが持つ固有振動音の音をイメージして吹くことが大事だと思います。

ピストンを押すと管がバイパス(迂回)されて息の通り道の長さが変わるような構造になっています。

そのピストンを押す組み合わせ方3本のピストンバルブに対してそれぞれ「押さない状態」「押した状態」2通りがあるので、

2 x 2 x 2 = 8通り
あることになります。

しかし、実際の基音(その管の長さで鳴らせる一番低い音)の変化は
7通り
となっています。そのことについては後述したいと思います。





・何も押さない状態




B♭管トランペットは伸ばすと全長135cmぐらいで基音B♭の音が鳴るようになっています。

(ここでは単に仕組みの説明という事で実音で解説していきます。)



倍音を利用するとこの管だけで上記の音を鳴らすことが出来きます。もっと上の音も出せるのですがとりあえずこの位にしておきます。

(倍音についての詳しいことはここでは割愛させてもらいます。楽器というのは低い音には限度がありますが高音については理論上、上限はありません。)

下の数字は倍音の現れる順番を表しています。7番、11番、13番、14番目の音は音程が通常音楽のスタンダードとして使われている十二平均律の音程より離れてしまうため、あまり使うことはありません。

トランペットは仕組み上、純正律が基(純正律が倍音を基にしているのですけど)となっていますが、転調にも柔軟なピアノやシンセサイザーのような十二平均律で調律されている楽器と演奏しても不協にならない音を使う必要があるからです。

1番目の音はペダルトーンなどと言われたりすることもあります。この音は通常の演奏に使うことは稀だと思います。

このペダルトーンというものは3ピストンバルブ式のトランペットでは基音の7つの音しか鳴らせません(理論的に)。inB♭でいうと「ファ#・ソ・ソ#・ラ・シ♭・シ・ド」になります。

この範囲しかないと曲らしいものを演奏するのは難しいですね。「12音出す方法はないの?」と思われた方は下の「おまけ」も読んでみてださい。


ですので、ここでは通常の演奏で使われる音を下記のようにまとめてみました。

    



・2番ピストンを押した状態




半音分低くなるように管を数センチ長くする。これが2番ピストンを押した状態になります。

そして、出せる音は次の通りになります。




・1番ピストンを押した状態




全音分低くなります。




・3番ピストンを押した状態 = 1+2番ピストンを押した状態




3番ピストンを押すと全音半分下がります。

実は、これは1番ピストンと2番ピストンを押した状態と同じなのです。それゆえピストンの組み合わせ自体は8通りですが出せる基音は7通りとなるのです。

通常の演奏では3番ピストンのみを使うことは一般的ではなく、1+2番を使う方が普通です。3番ピストンの役割は、それを押しつつ1、2番を使ってより低い音を鳴らすためであるからでしょう。

(※実際にはピッチ調節の都合上”1+2番”の長さより”3番”の方が長めになっている仕様の方が多いようです。)





・2+3番ピストンを押した状態




これで全音半+半音で2音分(全音2つ分)下がります。





・1+3番ピストンを押した状態




全音+全音半で2音半(完全四度)下がる。





・1+2+3番ピストンを押した状態




これで最長になり元の長さより全音3つ分(増四度分)も下げることが出来るわけです。





これら7つの倍音列をうまくつなげることで過不足なく音階を表現できる、ということになるわけです。

試しにかく倍音列を色分けしてまとめてみましょう。思った以上に音符が多くなりすべてかけませんでした(省略した音も含めると・・・(゚ロ゚;))。画像をクリックすると大きくなります。
 




Bbの倍音を黒、Aの倍音を青、Abの倍音を紫、Gの倍音を黄緑、Gbの倍音を山吹色、Fの倍音を朱色、Eの倍音を赤、で区別してみました。

(スペースの都合上音符に臨時記号がないのものはナチュラルだということにしてください。)

こうしてみるとうまく倍音を渡り歩いているのがわかりますね。しかも運指が違っても同じ音を鳴らすことの出来るものも結構あります。高い音になるほど同じ音でも多くの運指の可能性が出てくることになります。

トランペットの仕組み、ざっと解説しましたがなんとなくでもイメージをつかんでもらったら幸いです。

ピストンバルブにより長さの違う管をうまく使い分けているのだということを知っていれば運指表を見なくても運指を導き出せるようになれると思います。

トランペットだけではなくホルン、ユーフォニウム、チューバなどの金管楽器も音域は違いますが音を出す原理は同じです。
 



「おまけ」その1 〜4番ピストンバルブについて〜


私は以前チューバを吹いていたことがあったのですが、そのとき4ロータリー式のものを使っていました。ピストンバルブが4本あるのと同じことになります。

4バイパス式はチューバでは割とポピュラーな仕様ですがトランペットでは一般的ではないようです。

知っていても損ではないと思いますので、おまけの話として触れてみたいと思います。

この4番目のピストンを押すと1+3番を押すのと同じで2音半下がります。これで管を伸ばしさらに低い音を鳴らせるようになります。

4本のピストンの押し方の組み合わせ方は
2x2x2x2=16通りあることになりますが

・1+2番=3番
・1+3番=4番
・1+2+3番=2+4番
・1+2+4番=3+4番

の4通りがダブってしまうのでその分を省くと
16-4=12通りということになります。

これは半音づつ長さの違う管を12本持っていることと同じです。
それゆえ、基音で1オクターブ分の12音を出せるようになります。

なにを意味しているかと言うと、
ペダルトーンでも1オクターブ分演奏できるようになるのです!

トランペットで言えば4本全部押すと一番下のEより完全四度分低いBまで下がりますが、ペダルトーンを使うとさらにその1オクターブ下のBまで出せる可能性が出来るわけです。(下の音域表を参照してみてください)

一本ピストンバルブが増えることで1オクターブ半も音域が広がるとはすごいですね。

しかし、トランペットでは4ピストンバルブのものはとても少ないようです。理由としては、理論的には鳴らせるはずのペダルトーンでもトランペットぐらいの管の細さだとピッチがかなり低くなってしまい実際の演奏に使えないのが実状なのでしょう。

「トランペット奮闘日記」にてスチール・パイプで私が実験した録音があります。直径1.5cmぐらいの直管のスチール・パイプだと第3倍音以下はピッチがかなり下がってしまいます。興味のある方は聴いてみて下さい。
直管スチールパイプの音程

でも、トランペットと同じ音域を持つフリューゲル・ホルンでは4ピストンも珍しくない仕様のようです。トランペットよりベルが太いために低音域もうまく共鳴して、きれいに低音を鳴らせるのかも知れません。(深いカップのマウスピースを使うことも関係あるでしょう)

それと、トランペットより基音が1オクターブ高いピッコロ・トランペットでは4本ものの方が主流みたいです。ピッコロ・トランペットは通常のトランペットより出せる音域が狭くなるので、音域を下の方に広げるために4番ピストンバルブを追加した仕様の方が重宝されるのでしょう。

4ピストンをフルに使っても管の長さは通常のトランペットより短いですので低音域のピッチもあまり問題ないのでしょう。(まだ吹いたことがないのでどんな感じなのか判りかねますが)

ピッコロ・トランペットは通常のトランペットより管の長さが半分で基音が1オクターブ高いからといって高音がすごく出しやすくなるという訳ではありません。それは通常のトランペットと同じサイズのマウスピースを使うためです。

トロンボーン用のマウスピースを使って、管の長さが半分で基音が1オクターブ高いトランペットを吹いたとしても通常のトロンボーンより高音が出しやすくなるのか?というのと同じことです。

金管楽器で高音を出そうとする時は管の長さはあまり関係なく、唇の振動しだいとなります。(例えば、とても短い楽器として長さ9cmほどのマウスピースだけを吹く時に、ハイ音域以上が楽々出せるということはないのです)

もしかしたら、ピッコロ・トランペット用として内径10mmぐらいのマウスピースを使えば出しやすくなるかもしれません。でも、そんなに小さいと正式な演奏はムリでしょうね。(^^;)


どの種類の楽器にも、そのそれぞれの楽器が一番良く聴こえる音域があるわけです。そして、それぞれが出せない音域をみんなで役割分担して広い音域のハーモニーを作り出す。だから音楽は楽しいわけですね。

やはりトランペットには4番目は必要ないのかもしれません。チューバの場合、より低い音を鳴らすということより指使いが楽になるという利点の方が大きかったりします。なんせピストンバルブ自体かなりでかくなりますから。

押すところが3本しかないのにカッコいい演奏ができるということにトランペットという楽器の醍醐味があるのだと思います。

自作してみた少々マニアックな「4ピストン式を含む、B♭管トランペットの演奏可能な音域表(実音表記)」を掲載しておきたいと思います。ピッコロ・トランペットの音域も付けてみました。

トランペットにおいての4番ピストンで出せる音域については、あくまで理論的にと言うことで参考までに。



4ピストン式を含む、トランペットとピッコロ・トランペットの演奏可能な音域表


※チューニングする時に使う音の”シ♭”はドイツ語表記ではBと書き「ベー」と発音します。ナチュラルな””はHで「ハー」と読みます。英語表記でのB♭がドイツ語表記ではB(ベー)なのです。ん〜、なんだかややこしくなってしまいますな。f(^^;)




「おまけ」その2 〜トランペットの出せる一番高い音は?〜


ここで、「トランペットって一番高い音はどれぐらいまで出せるの?」という疑問もあると思うので私なりに回答してみたいと思います。

それは決まった音ではなく「人それぞれ」と言えます。金管楽器と言う楽器は押さえれば音が出るといった鍵盤楽器や弦楽器とは違い、音が高くなるにつれて急激に出しにくくなります。これがトランペットという楽器の難しいところでもあります。

しかしながら、トランペッターの中には非常に高い音が出せる”ハイノート・ヒッター”と呼ばれる人たちが存在します。

”ハイノート・ヒッター”の定義、私的には曲のラストにin B♭で”ダブル・ハイ・ド”(世間一般的に「ダブル・ハイC(実音でいうところのダブル・ハイ・ベー)」)をロングトーンで決められるプレーヤーの称号だと思ってよいと思います。

自分が今まで聴いたハイノート・ヒッターの音を基に新たに「トランペットの極限的音域表」をこしらえてみました。


トランペットの極限的音域表


B♭管トランペットで通常使われる”in B♭”での譜面で表記してみました。実音表記より全音分高く表記されていることになります。

「MF Tone」と印した”シ♭”の音はあの伝説のハイノート・ヒッター”メイナード・ファーガソン”が「Theme From Star Trek(スタートレックのテーマ)」(アルバム「Conquistador」に収録)という曲のラストで実際に出していた音です。(この楽曲のラストの音はハイ・シ♭なのですが、彼はそこからさらに1オクターブ上のダブル・ハイ・シ♭へと・・・@@;)

ここまでくるともう超音波・・・ありえないっす(笑)。この曲は私が子供の頃にやっていた「アメリカ横断ウルトラクイズ」と言う番組のテーマソングとしてよく耳にしていましたが、トランペットを始めてから聴いてみるとホントに常人には演奏不可能な高い音域で演奏されていて驚かされます。

おそらく、トランペットの演奏で使える高音の限界は”トリプル・ハイ・ド”辺りになると思われます。

ただ出すだけならもっと上も可能かもしれません(楽器の高音は理論上は上限はありませんので)。しかし、実際のトランペットの楽曲演奏中での録音でこれだけの高音を使えるのはメイナード・ファーガソンぐらいでしょうねぇ。

もちろん、ファーガソンだったらもっと上も出せたと推測できます。しかし、これ以上になるとピアノの鍵盤で弾ける音域を越えてしまいます。そうなると音楽的に美しいサウンドではなくなってしまうという意味もあります。まあ常人にはどうやったって到底届かない音域でありますが(^^;)。

(まだ実際に音の確認はしていませんがキャット・アンダーソンというプレーヤーはトリプル・ハイCもカバーした伝説の最高のハイノート・ヒッターとされているそうです)

ただ、トランペットは高い音が出せたらそれでいいと言うものでもありません。それは人それぞれの目指すスタイルがあると思うからです。高音が出せるか出せないかは本人の技量だけが理由ではなく使う楽器、マウスピースなどにも大きく左右されてしまう楽器でもあるからです。

例えば、カップの浅いマウスピースを使えば高音は出しやすくなっても通常での音域の響きが軽くなってしまう傾向にある。逆に、深いマウスピースなら高音は出しにくくなっても通常での音域の響きは豊かになる傾向にある。

プロのトランペット奏者でも誰しもがハイトーンを得意としているわけではないと聞きます。それは、そのプレーヤーが最も本人の音楽を表現したい音域が違うためと言えるでしょう。高い音が出せないからと言って自分には向いていない楽器と決め付けるのではなく自分なりの目指すスタイルを見つけるべきだと言えると思います。

とりあえず、標準的にはin B♭で”ハイ・レ”まで出せたら吹奏楽などの演奏活動に不都合はないのではと思います。本番の演奏で”ハイ・ソ”まで使えると言えればもうクラシックの楽曲の演奏においてはまず困ることはないでしょう。(コンボ・ジャズの代表的なウィントン・マルサリス、マイルス・デイヴィスのアドリブ演奏のコピーもいけるでしょうね)

ちなみに「Lupin Tone」と印した”ラ”の音は、ルパン三世のテーマ「ルパン三世'80」のトランペット・セクションでの最高音です。このハイ・ラ(実音G)を決められたらもうポップスでもトランペッターとして怖いものはないでしょう。

もしダブル・ハイ・ド(ダブル・ハイC)をカッコよく百発百中でキメられるようだったら、それだけでもプロのスタジオ・ミュージシャンとしてやっていけるかもしれませんよ。(それだけその音を鳴らすことは至難の業なのです)

でも、トランペットの超高音って何か心の琴線に触れるものがありますよね。
まあ、高い音に憧れを持ってしまうのはトランペッターの性(さが)なのでしょうね。

最後に、「トランペット奮闘日記」で私が書いた”トランペットのしくみ”に関連していると思われる記事を紹介しておきます。よかったら読んでみて下さい。

「トランペットの長さ 〜理論編〜」
「トランペットの長さ 〜検証編〜」

「ブブゼラのしくみ」

フラジオ、サックスのしくみ(前編)
フラジオ、サックスのしくみ(後編)


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